木を生かし木と暮らす       

  木のぬくもり                            私たちは、木にぬくもりや安らぎを感じています。西欧では「木に触れると幸運がくる」と言い伝えがあります。我が日本の神社のお札も木で出来ています。木に対して安心感や信頼感を抱くのは、人も木も生きているからなのです。木綿やウールに比べて、ナイロンやビニールの人工素材に何かしら違和感を感じたことはないでしょうか。それは日本人が長年土と紙で作られた住宅の中で常に生物素材と触れ合っているからなのです。

  自然のエアコン                        木綿の下着はナイロンに比べ汗を吸い取り肌触りが気持ちいいものです。桐(きり)の下駄が素足に心地よいのも同じ事で、足の裏の汗を吸い取ってくれるからです。また、大切な着物を守る和ダンスも同様に、吸湿性に優れた桐材が使われています。ですが、木は吸湿性だけに優れている訳ではありません。木は周囲が乾燥すると溜めていた水分を放出して、湿度を調節する働きもあるのです。壁に厚さ1cmの檜(ひのき)で仕上げた8畳の洋室で湿度が30%下がると何と6kgの水、一升瓶にして3本半もの水分を放出するというデータがあります。
世界にも知られる奈良の正倉院は「校倉(あぜくら)造り」という造りです。その中の宝物が、千古の昔から現在に至るまで保存されているのも、木材のもつ調湿性を生かした古人の知恵なのです。
木は機械より優れた「自然のエアコン」といえるでしょう。

  優しい光    
太陽の照り返しの眩しさで目が疲れてしまった、という経験をされていませんか。人間の目には反射率50%〜60%の光が最も心地よいとされています。私たちは夏の強い、そして有害な紫外線から目を守るためにサングラスをかけたりします。家の中にもそのサングラスと同じような役割をする物があります。それは木で出来た建材です。木(無垢材)が紫外線を吸収するのです。木目に似せたメラミン化粧板と本物の木の板を比べてみれば一目瞭然。その違いは光によって誰でも判る科学的な性質の差なのです。


  心地よい音
美術館や学校で自分の足音が響いて耳につくことがあります。一度出した音が天井や壁に反射し続ける現象を残響といいます。木材には適度な吸音効果があり、その残響を適度に抑えます。劇場など音に気を使う場所には木が多く使われているのはその為なのです。

  殺菌作用
森林浴という言葉をよく耳にします。森林独特のすがすがしい空気をあびる事を言い、ドイツでは百年も前からその習慣があります。森の中で動物が死んでいっても嫌な臭いがしない。弱った体に自然と力がわいてくる。それらは森の空気のおかげとされています。その秘密は森が発する香りの成分、テルペン系の揮発性物質によるものです。その中でも殺菌作用に優れている物質に「フィトンチッド」と呼ばれるものがあり、それが腐朽菌などの菌の活動を抑制するのです。その効果は、木が大地から切り離されても急激に衰える事はありません。ヒバで建てた家には蚊が来ない、椴松(とどまつ)を使うと結核菌やジフテリア菌を寄せつけない、檜には消炎・鎮痛・鎮咳作用がある、杉には脳の働きを活発にするなど、その能力は計り知れません。そんな木とうまく生活したいものです

  長寿
日本には世界遺産に認められた屋久杉があります。樹齢は2千年、3千年のものも少なくありません。法隆寺の昭和大修理にあたった宮大工によると、千三百年経った柱に鉋(かんな)をかけるとまだ新しい木の香りがした。また屋根の重みで10cm下がった垂木(たるき)も瓦を取り除いて3日もするとまっすぐに戻ってしまったそうです。
もっと驚くことに檜は伐られた後も生き続けるだけでなく一定期間は強度が増すというのです。千葉工業大学小原二郎氏が檜の古材を調べた結果、伐られてから100年〜200年経ったとき、圧縮・引っ張り・曲げに対する強度が最も増している事が判りました。その時をピークに徐々に弱くなり、千年くらい経ってやっと元の強さに戻るというのです。
法隆寺に使われている木材は千三百年経った今、やっと伐り出された時と同じ強さになったことになります。そうして考えてみると、日本でもヨーロッパでも200年〜300年の木造住宅は珍しくなく身近な事として理解できるのではないでしょうか。


  強い
木と鉄、どちらが強いのでしょう。鉄と答える人が多いのではないでしょうか。同じ太さの鉄と木を比べれば、鉄のほうが強いのです。重さあたりの圧縮強さを比較すると、杉材はコンクリートの5倍もあり、引っ張りの強さでは鉄の4倍もあります。この事から判るように、木は軽くて強いのです。でも、木は燃えてしまうのでは…と言われがちですが、実は鉄のほうが火に弱いのです。木はある程度以上の厚みがあれば表面が焦げるだけで燃え尽きる事はありません。それは表面の炭化層が断熱材の役割を果たすので、内部の木が熱分解して可燃ガスが発生するのを防げるからです。木と鉄の梁を火災時と同じ条件で加熱した例では鉄は5分も経たないうちに強度が元の半分に衰えてしまいますが、木の強度が元の半分になるのには20分経ってからです。


  腐らない
本当に木は腐るのでしょうか。昭和57年に奈良の桜井市で発掘された山田寺の回廊部分は、現存する法隆寺より50年ほど古い千三百五十年間、ほぼ原型のまま腐りもせず地中に埋まっていたのです。
ものが腐るというのは腐朽菌が繁殖することによって起こる現象です。菌は酸素と水分の両方がそろってはじめて活動できるのですからどちらか一方が不足していれば腐るということはありません。法隆寺が朽ちないのは酸素が十分でも水分が不足していたからで、山田寺の場合は土に埋まっていた事で酸素が少なかった為なのです。
 
視覚特性の比較
       大理石 プラスチック
暖色 ×
色の自由性 ×
非グレア性 × ×
ミクロテクスチア
光沢巽方性
パターン
 ○:優れている △:少し劣る ×:劣る
 注)グレア性:まぶしさ                      
ミクロテクスチア:微細な風合             
         

植物の抗菌・殺菌作用
植物 内容
ユーカリ ブドウ状球菌・流感ビールス・創傷治癒・呼吸器系の治療・防虫(蚊など)
カシ 呼吸器系の治療    
ヒバ 防虫(蚊など)
イチョウ 高血圧治療
ポプラ 痔治療・流感ビールス
マツ・スギ ジフテリア菌
ツツジ 黄色ブドウ状球菌
モミ 黄色ブドウ状球菌
ササ 防腐効果
シラカバ   オレンジ    カシ カビ・バクテリアの減菌効果